花帆「はーい……って、梢センパイ?」ガチャッ
花帆「わざわざ部屋まで……どうしたんですか?」
梢「花火をしようと思って、誘いに来たの」ニコッ
花帆「は、花火?何だか急ですね……」
梢「合宿をした時に、皆でしようかと思って持っていったのだけれど」
梢「何だかんだでバタバタしていて出来なかったのよね」クスッ
梢「それで、もし時間が許すようならどうかしら?」
花帆「あ、はい、それじゃあ支度しますね」ガサゴソ
梢「…………」
――
花帆「わぁ、桐の箱に入ってる線香花火って初めて見た……」
梢「よくある外国製の花火も手頃で良いとは思うのだけれど」ガサゴソ
梢「花火なんて年にそう何度もやるものではないから、折角なら……ね」ガサゴソ
花帆「えっ!専用のロウソクとか付いてくるんですね、凄い……」
梢「さ、準備完了よ!今夜は風は無いけれど、一応火には気をつけてね」
花帆「はーい、それじゃ一本失礼します」ジュッ
花帆「わぁ……綺麗……!」パチパチ
梢「そこが国内の職人さんが、丹精込めて作った花火の特徴かしらね」フフッ
花帆「凄い凄い!こんなに勢いも強いのにまだ消えませんよ!」パチッパチッ
梢「ふふっ、やっと笑ってくれたわね」
花帆「えっ?あっ……」パチッ
梢「今日は練習の時から浮かない様子だったから、少し気になっていたの」
花帆「あはは……表に出ちゃってましたかね、ごめんなさい」シュゥゥ
花帆「あ、消えちゃった……」
梢「良かったら聞かせて貰えないかしら?」
梢「…………」
花帆「何となくカレンダーを眺めていたら、夏休みがもうすぐ終わりそうで……」
花帆「あっという間だったなぁ、って考えていたら……四月に入学したのも昨日のことみたいで……」
花帆「時間の流れの速さが怖くなっちゃった……みたいな」
花帆「あはは、変なこと言っちゃってすみません……」
梢「…………」
梢「……そうね、少し見ていてもらえるかしら」ジュッ
花帆「花火……?」ポカン
梢「火をつけて間もない頃、小さく丸い“牡丹”の花のような形を命の始まりとして」パチパチッ
梢「勢いを増し、“松葉”のように枝分かれした火花が激しく吹き出す様を、人生の最盛期」パチパチパチッ
梢「やがて勢いは衰え、“柳”の木のように枝垂れた光が細長く落ちていく様が、定年を迎えた辺りかしら」パチッパチッ
梢「そして最後に、散りゆく“菊”の花びらのように小さな火花が落ちていき、火玉が燃え尽きる……これが命の終わり」ジュッ
花帆「…………」
梢「蓮ノ空での私たちに例えるなら……入学したての頃を牡丹として、今はお互い松葉かしらね」
梢「燃え尽きる“その時”に怯えながら火花を散らしても、大きな耀きを放つことは出来ないと私は思うの」
梢「言ってしまえば、“ラブライブ優勝”……それと月々のFes×LIVEもそうね」
花帆「……!!」
梢「きっとあなたとなら大輪の花火を咲かせて、観ていただく全ての人たちに……強い残光を灼きつけることが出来るわ」
梢「これはあなたより先に燃え尽きてしまう、私自身に言い聞かせている言葉なのかも知れないわね」ボソッ
花帆「……///」ポケーッ
梢「花帆さん……?聞いていたかしら?我ながら結構いい話をしていたと思うのだけれど……」ジーッ
花帆「あ、あのっ!とにかくアレですよね!前を向いて頑張ろう!みたいな……あはは」
花帆「すみません、梢センパイの話はちょっと難しかったんですけど――」
梢「そ、そう……」シュン
花帆「ただ、花火の光に照らされた真剣な表情の梢センパイが、なんだか綺麗で……それで……///」
梢「なっ……!///お世辞を言って話を逸らしても、そうはいかないんだから……!///」カァァ
花帆「ちっ、違っ!お世辞なんかじゃ――」
梢「とにかく!日々一心不乱に鍛錬を積み重ねていれば、感傷に浸る暇も無いということね!」キリッ
花帆「つまり……?」
花帆「え゙っ!?いやいやいや!もう十分ですから!」アセアセ
梢「ふふっ……ふふふっ」クスッ
花帆「梢センパイ?」キョトン
梢「いえ、やっぱり元気な花帆さんが一番だと思って」ニコッ
梢「どの表情も素敵だと思うのだけれども……花帆さんには笑顔で居てほしいの」ナデナデ
花帆「うぅ……///」カァァ
梢「こうして恥ずかしそうに顔を赤らめた花帆さんも可愛らしいわね」クスッ
梢「からかってなんていないわ、本当に可愛い私の大切なパートナーなのだから」
梢「花帆さんには……いつまでも私の隣で、笑っていてほしいのよ」ニコッ
花帆「なんだかそれ、恋愛ドラマの決めゼリフみたいですね///」ドキッ
梢「あら、それじゃあ花帆さんには美味しいお味噌汁を毎朝作ってもらおうかしら……なんて――」
花帆「……!!」
梢「か、花帆さん?どうして何も言ってくれないのかしら……?」
梢「まるで調子に乗りすぎた私が、一人で火傷しているみたいじゃない……!///」
梢「花帆さん?///急に燃え尽きないでほしいのだけれど……!///」
花帆「練習しなきゃ……!」
梢「……えっ?」
花帆「さやかちゃんに教えてもらって……あたし、美味しいお味噌汁作れるようになりますから!!」フンスッ
梢「いえ、その、今のは違くて///――」
花帆「違うんですか!?」ガーン
梢「違くも、無いかも知れないのだけれども……///」
花帆「あれ?そう言えばあたし、どうして落ち込んでたんでしたっけ?」
梢「ふふっ、その切り替えの速さも花帆さんの立派な長所よね」クスッ
花帆「えへへっ、それほどでも……」
花帆「あっ!それより梢センパイ!お味噌汁の具は何が好きですか!?お豆腐?わかめ?」
花帆「あたし頑張りますから、待ってて下さいね!!」フンスッ
梢「か、花帆さん……!それにはまずご家族への挨拶や、将来に備えての綿密な準備が必要であって――」ブツブツ
花帆「え?そんな大げさな話ですか……?」キョトン
梢「当然でしょう!私たちの将来を左右する大切な話なのだから……!」キリッ
花帆「これは腕によりをかけて作らないと!ですね!」フンスッ
梢「いえ、そういうわけでは無いのだけれど……」
花帆「あ!そうだ花火!まだまだたくさんあるんだから、やらないと損ですよね!」パチパチッ
梢「花帆さん?まだ話は終わって――」
花帆「見て見て梢センパイ!六本同時ですよっ!あははっ!綺麗ー!」パチパチパチッ
梢「っ!?あまり調子に乗ると危ないわ!花帆さん!?止まりなさい!!」ドタバタ
おわり
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